きたかみ腎クリニック

CKD(慢性腎臓病)ステージG1〜G5をわかりやすく解説:eGFRの見方と食事制限の変わり方

2026/05/08

CKDステージと腎臓の模型、腎臓に配慮した食材(野菜・魚・鶏肉など)が並ぶ、医師が記録するイメージ

「eGFRが低い」「慢性腎臓病(CKD)と言われた」と聞くと、多くの方は不安になります。でも、CKDはステージによって状況も対策も大きく異なります。今回は、きたかみ腎クリニックが、CKDの「今どの段階にいるのか」を理解するための基本を解説します。

1. CKD(慢性腎臓病)とは?

CKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)とは、腎臓の機能が3ヶ月以上にわたって低下している、または腎臓に異常(蛋白尿など)が続いている状態のことです。

日本では成人の約8人に1人がCKDと推計されており、「新たな国民病」とも言われています。初期は自覚症状がほとんどないため、健康診断での発見が重要です。


2. eGFRとは何を表す数値か

eGFR(推算糸球体濾過量) とは、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示す指標です。血液検査のクレアチニン値・年齢・性別から計算されます。

eGFR(mL/分/1.73m²)腎機能の目安
90以上ほぼ正常〜高値
60〜89軽度低下
45〜59中等度低下(前期)
30〜44中等度低下(後期)
15〜29高度低下
15未満末期腎不全(透析・移植を検討)

eGFRは年齢によっても変動しますが、数値が低いほど腎臓への負担が蓄積していることを意味します。

eGFRは「目安」であり、年齢によって解釈が変わる

ここで一点、教科書には書かれにくい実臨床の話をしておきます。

eGFRの計算式には年齢・性別・クレアチニンが組み込まれています。「年齢が式に入っているなら、年齢差は吸収されているのでは?」と思われるかもしれません。しかし実際には、同じeGFR 60という数値でも、30代の方と80代の方では臨床的な意味がまったく異なります。

  • 30代でeGFR 60 → 正常値(90以上)に対して大きく低下しており、原因究明と経過観察が急がれます
  • 80代でeGFR 60 → 加齢に伴う生理的な低下の範囲内であることが多く、過度に心配しなくてよいケースも少なくありません

この違いが生じる背景のひとつは筋肉量です。クレアチニンは筋肉から産生されるため、加齢で筋肉量が減った高齢者ではクレアチニンが低く出やすく、その結果eGFRが実態より高く計算されやすい側面があります。逆に言えば、高齢者のeGFRは「腎機能を過大評価している可能性」を持ちます。

実際の診療では、eGFRの絶対値だけでなく、数値の変化のスピード(トレンド)蛋白尿の有無を組み合わせて評価することが重要です。「eGFR 65だから安心」「eGFR 55だから危険」という単純な白黒判断にはなりません。


3. CKDステージ一覧(G1〜G5)

CKDは腎機能(eGFR)の低下度合いによって、G1〜G5の5段階に分類されます。さらに蛋白尿の程度によってリスクが細かく評価されます。

G1(eGFR 90以上)

腎機能は正常〜高値ですが、蛋白尿などの異常が3ヶ月以上続いている段階です。この時点では自覚症状はほぼありません。検査値の変化を定期的に追うことが最も重要な時期です。

G2(eGFR 60〜89)

軽度の機能低下。やはり症状は出にくく、多くの場合は健診で初めて指摘されます。生活習慣の見直しが最優先の対策になります。

G3a(eGFR 45〜59)/ G3b(eGFR 30〜44)

中等度の低下。この段階から、食事療法(塩分・蛋白制限)が本格的に重要になってきます。貧血や血圧上昇が見られることもあり、薬物療法が加わることが多い時期です。

G4(eGFR 15〜29)

高度な低下。むくみ・倦怠感・食欲不振などの症状が出やすくなります。透析の準備についても腎臓専門医と相談を始める時期です。

G5(eGFR 15未満)

末期腎不全。腎代替療法(透析または腎移植)が必要な段階です。透析を開始するタイミングは、症状や体の状態を見ながら医師と慎重に決定します。


4. ステージで変わる食事制限のポイント

食事療法は「どのステージか」によって大きく変わります。G1〜G2とG4〜G5では、まったく異なるアプローチが必要です。

ステージ塩分制限蛋白制限カリウム制限リン制限
G1〜G2軽度(6g/日未満が目標)基本不要不要不要
G3a〜G3b必要(6g/日未満)軽度〜中等度数値次第で検討注意開始
G4必要(6g/日未満)中等度必要な場合が多い必要
G5必要(6g/日未満)透析の有無で異なる必要必要

重要: ネットで調べた食事制限を自己流で実践するのは危険です。ステージや個人の数値によって正解が変わるため、必ず担当医・管理栄養士と相談してください。


5. 教科書と実際の臨床の間で――当院が大切にしていること

上の表を見ると、ステージが進むにつれて「塩分も、蛋白も、カリウムも、リンも制限」と、制限の数がどんどん増えていきます。これは医学的には正しい記述です。しかし実際の患者さんの食卓に当てはめると、話はそう単純ではありません。

たとえば糖尿病を合併している方の場合を考えてみましょう。

  • 糖尿病のために → 糖質を控える
  • 腎臓病のために → 蛋白を制限する
  • 脂質異常があれば → 脂質も控える
  • 腎機能が低下してきたら → 野菜・果物もカリウムに注意

これらをすべて同時に「守ってください」と伝えると、「では何を食べればいいんですか?」という状態になってしまいます。患者さんが途方に暮れ、食事指導へのモチベーションを失い、最終的に通院をやめてしまうケースを、外来でも少なからず見てきました。

「完璧な制限を2ヶ月守る」より、「8割の制限を5年続ける」方が腎臓は守られます。

当院では、医学的なガイドラインをベースにしながらも、「その方の生活の中で実際に続けられること」を最優先に考えた食事・生活指導を大切にしています。

  • 何をどの順番で優先するか、一緒に相談しながら決める
  • 「まずここだけ」という最小限の変化から始める
  • 管理栄養士と連携して、具体的な献立レベルまで落とし込む

完璧な正解を押しつけるのではなく、あなたにとっての「続けられる管理」を一緒に見つけていくことが、きたかみ腎クリニックが大切にしていることです。


6. 早期発見・早期介入が大切な理由

腎臓の機能は、一度失われると基本的に回復しません。しかし、早い段階から適切な治療と生活改善を行うことで、進行を大幅に遅らせることは十分に可能です。

G3以降から始めるより、G1〜G2の段階で気づいて対策を取ることが、最も効果的な透析予防につながります。「数値が少し悪いだけだから大丈夫」と放置せず、専門医への相談を習慣にしてください。


まとめ

CKDのステージは、eGFRという数値によって客観的に評価できます。ただし、eGFRはあくまで「目安」であり、年齢・蛋白尿の有無・数値の変化のトレンドを合わせて読む必要があります。

また、食事制限は「ガイドラインに書かれたすべてを完璧に守ること」が目的ではありません。あなたの生活の中で無理なく続けられる管理を、専門医と一緒に見つけていくことが、腎臓を長く守ることにつながります。

健診でeGFRが低いと指摘された方、「何をどこまで制限すればいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ当院へご相談ください。

腎臓でお悩みの方へ

「eGFRが低い」「蛋白尿が出ている」と言われたら、
早めの受診が大切です。
きたかみ腎クリニックでは、腎臓内科の専門医が
あなたの数値に合わせた治療と生活指導を行っています。
オンライン診療でのご相談も可能です。