きたかみ腎クリニック

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中高年男性に多い前立腺肥大症。予防法や原因・症状を解説

2023/04/27
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男性が30代を過ぎてから尿トラブルに悩まされている場合、前立腺肥大症の可能性があります。

前立腺肥大症自体は良性の病気ですが、頻尿や排尿困難などによって日常生活に支障をきたすことがあります。

そこで今回は、前立腺肥大症の原因や症状、日常生活で実践できる予防法についてご紹介します。

前立腺肥大症の原因と症状

前立腺とは、膀胱の下にある栗の実ほどの大きさをした、男性だけにある臓器です。前立腺肥大症は、この前立腺が大きくなり、さまざまな排尿障害を起こす病気を指します。

前立腺が大きくなると尿道や膀胱が圧迫されるため、尿に関する次の症状があらわれることがあります。

  • トイレが近くなる(頻尿)
  • 夜に何度もトイレに行かなければならない(夜間頻尿)
  • 尿がすぐに出ない、あるいは時間がかかる(排尿遅延)
  • 排尿後もまだ残っている感じがする(残尿感)
  • 尿の出方に勢いがない
  • 尿が分かれて出る
  • 力まなければ尿が出ない

前立腺肥大症になりやすい人

前立腺肥大症の危険因子をもとに、前立腺肥大症なりやすい人を解説します。

中高年の方

前立腺肥大症の明らかな危険因子は加齢です。組織学的な前立腺肥大は30代から始まり、50歳から頻度が増加します。

前立腺肥大症の有病率は50歳で30%、60歳で60%と倍増し、70歳では80%、80歳になると90%にのぼります。また60歳の男性の半数以上は、前立腺が肥大しているともいわれています。

遺伝的要因がある方

父親や兄弟に前立腺肥大症の手術既往がある場合は、同年代の方と比べて前立腺肥大症になるリスクが高まると報告されています。また、一卵性双生児の前立腺肥大症の相対危険度は二卵性双生児の約3倍とされています。

こうして点から前立腺肥大症の発生や進展に何らかの遺伝学的影響があると推測されていますが、現在のところ詳しいことは解明されていません。

肥満・高血圧・高血糖・脂質異常症および性機能障害の方

肥満や高血圧などによって高インスリン血症を引き起こすと、自律神経の一種である交感神経が過度に緊張した状態になることがあります。交感神経の過緊張は前立腺平滑筋の増殖や緊張を招き、前立腺を大きくする可能性があるとされています。

その他の危険因子について

前立腺肥大症への喫煙の関与は少ないと考えられています。また、性生活や性感染症との関係は明らかになっていません。一方で肝硬変患者の方は一般に前立腺肥大症の有病率が低いとされています。

前立腺肥大症の予防法5つ

前立腺肥大症の予防につながる可能性がある、日常生活の見直しポイントを5つご紹介します。

予防法【1】野菜・全粒穀物・大豆を積極的に摂る

穀類・肉類の摂取が多く、野菜や豆類が少ないと、前立腺肥大症のリスクを高めるとされています。中でも下記の成分が豊富に含まれる野菜や果物の摂取が推奨され、消費量が多いほど重症度が下がるとされています。

  • βカロテン…にんじん、ホウレンソウ、ニラ、マンゴー、干し柿など。
  • ルテイン…小松菜、アボカド、カボチャ、乾燥プルーンなど。
  • ビタミン C… ピーマン、ブロッコリー、キャベツ、キウイフルーツ、イチゴなど。

また、大豆イソフラボンの一種であるゲニステインやダイゼインや、全粒穀物などに含まれるリグナンは、前立腺肥大症の抑制に役立つと考えられています。

そのため、納豆や豆腐といった大豆製品を摂取したり、主食には玄米や全粒穀物を使ったパンなどを選んだりすることも前立腺肥大症の予防に役立つ可能性があるでしょう。

予防法【2】体を冷やさない

寒い場所に長時間いたり、水泳をしたりして体を冷やすと、前立腺肥大症の症状が出やすくなるとされています。特に下半身の冷えには注意してください。

下半身の冷え対策には、使い捨てカイロやレッグウォーマー、湯たんぽを活用すると良いでしょう。仕事や家事の合間の時間を使ってつま先立ちやスクワットをして下半身の筋肉を鍛えることも、冷え対策に役立ちます。また、入浴の際にはシャワーだけで済まさず、湯船に浸かって体を芯から温めましょう。

予防法【3】座りっぱなしにならない

前立腺肥大症の予防のためには、日常生活で適度に体を動かすことも大切です。通勤や買い物の時間を使ってウォーキングをしたり、自宅でこまめにストレッチしたりするなど、積極的に運動する習慣を身につけましょう。

特に気をつけたいのが、デスクワークやスマートフォンの操作、テレビの視聴などで座ったままの姿勢が長時間続かないようにすることです。座りっぱなしの状態が続くと、下腹部に血液がたまり、前立腺がうっ血して尿が出にくくなることがあります。

仕事中やテレビを楽しんでいる間も適度に立ち上がり、リフレッシュもかねて体を動かすようにしましょう。

予防法【4】適度な水分補給

水を飲み過ぎたり、一度に大量の水分を補給したりすることは避けましょう。水分摂取量が増えると尿量も増えてしまうため、トイレの回数が増えるなど、前立腺肥大症の症状が出やすくなってしまいます。

ただし、健康維持のためには水分補給が必要ですので、過度な水分量をこまめに摂取するように心がけることが大切です。

予防法【5】カフェインやアルコールを控える

カフェインやアルコールには利尿作用があるため、摂取によって前立腺肥大症の症状が出やすくなるとされています。また、アルコールによって前立腺がうっ血して腫れてしまうと、尿道の圧迫につながることがあります。

そのため、前立腺肥大症予防のためにはカフェインやアルコールはできるだけ控えましょう。

ガイドラインによると、夕食後のコーヒー・アルコール・水分の接種を控えるといった生活指導によって、25%以上の症例で症状が改善したことが報告されています。

前立腺肥大症に思い当たる方は医療機関の受診を

前立腺肥大症は、すべての方が治療を必要とする病気ではありません。しかし、夜間頻尿や排尿遅延などによって日常生活に支障をきたしている場合は医療機関を受診しましょう。

前立腺肥大症でみられる症状は、前立腺炎や過活動膀胱など、ほかの病気が原因であらわれる場合もあります。原因を明確にして、適切な治療を受けるためにも、排尿に関するお悩みがある方は、当院へお越しください。

また、薬の種類によっては前立腺肥大症を悪化させる場合があります。持病で服用している薬があり、前立腺肥大症の疑いがある症状がみられる場合も、ぜひ一度、ご相談ください。

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